バンクーバー珍道中

バンクーバーでの備忘録

トロント・オタワ旅行記(中編)

 VIA鉄道に揺られる事5時間。ほぼ定刻通り13時過ぎにオタワ駅に到着。駅からすぐの市内電車に乗り換え、バックパッカー用の宿に向かう。ダウンタウンから少し外れたくらいにある場所で、ボロではあるがまあ40ドルそこそこの値段ともいえる宿に荷物を置き、市内観光。まずはチューリップ園のある場所に移動したが、とんでもない積雪のお陰で地面が見えない。園のどこかにはオランダ王室からの友好の証である記念碑があるはずなんだが、それを探す気も失せてしまうほど雪ばかりで参ってしまった。園は川沿いにあり、というか最初は超巨大な公園か何かだと思うほどだだっ広い土地が目の前に広がっており、そこに家族ずれから独り身の仕事帰りの人までぞろぞろ移動しているので、私もそれについて行ってみた。

 するとそこは実際は川で、それがマイナス10度以下の天気で凍っているのでスケートリンクに転用され、皆スケートシューズを履いて凍った川の上を疾走している。仕事や学校帰りの人がスケートシューズに履き替え、友人と話しながら川の上を滑っている光景は「こ、これが本物の雪国か・・・」と感動、というより恐れ戦いてしまった。川沿いに歩くと所々、川から道路に上がれる場所が設けられており、そこでスケートリンクから靴に履き替えて各々が目的地を目指すようだ、確かに川を渡れば早かろうが、やり方が雪国だ。

 それを一通り堪能したら、今度は街の中心に戻ってカナダの国会議事堂やら主要な政府建物を観光。だが、このタイミング(17時)で日が落ち始め、だんだんと耐えられるレベルを超えた寒さになってきた。手袋を取ってスマホで写真を撮ろうとしたら腕が痺れはじめ、足は結構良いゴアテックスの靴だというのに、雪解けした水が入り込み、それがマイナス20度の気温で急速に足元の体温と感覚を奪っていく。大急ぎでショッピングセンターに駆け込むも、オンタリオ州はレストランや珈琲ショップでの店内飲食が禁止されているので落ち着ける場所もなく、時間が経ち真っ暗になれば外は人間の生きていける気温ではなくなると感じたので、特攻覚悟で宿まで戻った。時間にすればものの10分程度だったと思うが、できれば二度と経験したくない10分間だった。

 宿に戻ってからはとにかく体を温めるのと、失った体力を取り戻すために寝倒した。ただあまりに疲れすぎていたせいか、2時間寝ては起きるを繰り返していた。結局18時前に宿に着いてからはまともに動くこともなく、寝ては起きて、眠くなるまでだらけてまた寝る、の繰り返しだった。そのお陰かひとまず疲れを残すことなく翌日を迎えることが出来た。

 翌日はオタワからトロントに帰る。朝8時の列車で帰るんだが、そのためには6時に起きねばならず、そんな頃の気温と言えばマイナス26度と私の人生で未踏の領域にある気温だ。とにかく急いで宿から市内電車で駅まで向かい何とか事なきを得た。VIAオタワ駅構内は外気を忘れさせてくれるほど暖かく、そのまま眠りこけてしまいそうになるほどだった。帰りの列車は車両トラブルとそれによって乱れたダイヤがドミノ式に乱れた影響で出発が30分以上遅れた。車内に乗り込んだは良いものの、行きの客車と違うせいなのか、車内が寒い。窓を開けっぱなしにして暖房を全開にしているようなあべこべさを感じる車両でとても雪国を走るために設計されたとは思えない代物だった。おかげで6時間の移動中一睡もできず余計疲れてしまった。

 15時にトロントへ戻って来て、バンクーバーで知り合った友人と再会。ショッピングモールをうろつきながら2時間ほどだべりながらお互いの事を話し合った。久々に会えてとても嬉しかった、列車の事もこの頃にはすっかりと忘れてしまっていた。友人と別れて今度は宿へ移動。空港近くに取ったが、これは少しダメだった、ダウンタウンから遠く移動に1時間もかかる。急な予定変更でホテルも変えてしまっていたので、それが悪い方に出てしまった、次からは少し高くても中心街に泊まらなくては。夕食は宿近くにあるお寿司屋さんでテイクアウトを取り、ホテルの室内でそれを食べた、思えば旅行中に食べた唯一まともな食事だったかもしれない、このご時世だとテイクアウトしたものを食べる場所がなく、旅行中だとゆっくり座れないと難しいのが災いしている。最終日に至ってはテイクアウトしたラーメンをユニオン駅構内のベンチに座って食べるという珍妙な事をしてしまった。閑話休題、ホテルで夕食を終えた後はオタワの時同様寝ては起きて、眠気が来たらまた寝てを繰り返した。

 

 これが1日目、2日目の旅行内容になる。振り返ってみると、私は修行僧か何かではないかというくらいキツイ事ばかりしているな、というより冬に本物の冬国に旅行したのが間違いだったなと。トロントだけで終わっていればよかったがコンサートキャンセルで時間が出来てしまったので「せっかくなら」という気持ちでオタワを入れたのは、些か思慮が足らなかった。ただVIA鉄道に乗れたのでその点は非常に満足だ。もしトロントやら東側にワーホリなりをしていたら大変だったな、鉄道を乗りまくるために今以上の散財を繰り返していたかもしれない。