バンクーバー珍道中

バンクーバーでのワーホリ備忘録

イミテーションとインデペンデント

先輩が今まで踏んで来た経路を自分も一通り遣らなければ茲所に達せられないような気がする如く、日本が西洋の前に出ると茲処に達するにはあれだけの経路を真似て来なければならない、こういう心が起こるものではないかと思う。また事実がそうである。しかし考えるとそう真似ばかりしておらないで、自分から本式のオリヂナル、本式のインデペンデントになる時期はもう来ても宜しい。また来るべきはずである。

夏目漱石 模倣と独立

 

相手の良い点を積極的に取り入れるのは必要だし、また「学ぶ」が「真似ぶ」と同義かそれに近いものである以上偉人や尊敬に値する人物の行動はそれこそ真似したくなる、とくに自己啓発本に書かれた数々の「画期的」なルーティンはとても魅力的に映り、すぐに真似したくなる。

ただ私は経験上、まず自分という人間がそれを行う事が可能なほど有能なのか? という疑問符を投げかけている。そういった画期的だったり驚愕するような行動はその人物が長い時間と思案を重ねた上に到達した方法であり、それを直ちに上っ面だけなぞれば自分のものにできる、というような短絡的な思考は出来る限り避けるべきだろう。

例えるなら、自分が他人よりも豊富な知識を有している分野があるとしよう。サッカー、野球、小説、哲学、野菜の見分け方、子供のあやし方。そういったものを誰もが有しているはずだ。するといきなり「10時間で分かる『サッカー(ここには自分の得意分野の名前が入る)』!」なる本が発売され、それを読んだ人間が「はっはっはぁー! これで私も『サッカー』に詳しくなったぞ!」と言ったとしよう。

私としては「はあ、そうですか」と頭を掻きながら、恐らく彼がメッシの初ゴールをロナウジーニョがアシストしたことは知っていても、その時の彼の背番号が30だったことを知りはしないだろうと確信する。モハメド・サラーがチェルシーバーゼルにいた事は? バロンドールを取ったモドリッチは? マンチェスターユナイテッドに背番号7の呪いが存在している事は? 

はっきり言って自分、あるいは大勢の得意分野がたかだか10時間如きで網羅されるほど底が浅いものでは決してない、それくらい「オリジナル」や「自分らしさ」を獲得するのは大変なのだ。だから真似をすれば、直ちにその「オリジナル」が手に入ると思っているならば、自分の得意分野を習得するのに費やした時間を考えてみると良い、恐らくその半分でもかなりの時間になるはずだ。

と、まあ回りくどい事をつらつらと書いてしまったが、要するに人のやり方をまるで追剥のように盗んでいくばかりをしていると、結局は何も知らない人間になりかねない、結局は自分であれこれ悩んで憤りながら導き出した結論が、自分にとって一番馴染むものとなり、その過程を経ればこそ「オリジナリティ」というものも生まれるのではないか? と言いたいのであります。

 

 

 

模倣と独立

模倣と独立